卒業
ぼくときみが 出逢ったのは
桜の花弁が
頬を桃色に染める頃だった
ぼくらは 春に生まれたんだ
団扇だけでは たまらない昼下がり
補習を終えたぼくは
美術館下の公園のベンチに座っていた
太陽の眩しさに負けまいと
部活をがんばるきみを
ずっーと待っていた
やっとやって来たきみの
頬は
流れる汗で 光っていた
生きづくものが
頬を赤くポーッとする頃
ぼくは 専門学校に合格した
文化祭のステージの上で
きみは 就職が決まったと
ウインクした
小雨だと思っていたら
雪が
頬を冷たくした昼下がり
下駄箱から黒のローファーを下ろしたら
階段を息を切らせて降りて来たきみの
背の高さを見上げていた
お雛様が 満面の笑みを見せる頃
ぼくらは 卒業する
やがて
ぼくらが 生まれた春がやって来る
今年も 桜の花弁が舞い降りるのだろう
花弁が 地面に絨毯を織り上げた後
ぼくときみの
それぞれの新しい出発(たびだち)は始まる
ぼくらの 行くところは違っていても
ぼくらは 春に生まれたんだ
ぼくときみの 固い固い絆は
桜の花弁に 誓って いるから
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