2021年12月29日
詩「透明な色」木村永遠
住んでる市を抜け出して
自然の中に
自分を置きたかった
今日は
よく行く高原で
止まることは無かった
車を風に任せた
県境で一度車を降りて
山と山 草と草 牛と馬の
茶色と緑の風景の中に
からだを滑らせた
もう少し
車にがんばってもらった
『花の温泉館』
名前に惹かれた
以前は
温室だったようだ
温室で育った
ピンクのバラの様に
私はお湯の中で身も心も
ポーットなる
近くの『池山水源』では
水がひっきりなしに
湧き出ていた
真ん中の蛇口から
伸び伸びとした水を
小さな容器の世界に移した
蛇口から少し歩くと
水が人里に最初に現れる所が
あった
透明な色が
こんなに綺麗だなんて
初めて知った
透明な色は
遠近感さえ
わからなくさせる
急に目の前が真っ白になった
時間さえ
わからなくなった
少し経つと
意識がはっきりして来た
洞窟の中に居るようだ
不思議と安らかだった
ようやく
ここは
母の胎内だとわかった
私は羊水の上で
静かに眠っていた
いつまでも続く安心の中で
からだ全体を
こころの奥の奥を
透明な
あなたに任せていた

(#国民文化祭 #紀ノ国わかやま文化祭
#いわで現代詩の祭典 テーマ #色 応募詩)
自然の中に
自分を置きたかった
今日は
よく行く高原で
止まることは無かった
車を風に任せた
県境で一度車を降りて
山と山 草と草 牛と馬の
茶色と緑の風景の中に
からだを滑らせた
もう少し
車にがんばってもらった
『花の温泉館』
名前に惹かれた
以前は
温室だったようだ
温室で育った
ピンクのバラの様に
私はお湯の中で身も心も
ポーットなる
近くの『池山水源』では
水がひっきりなしに
湧き出ていた
真ん中の蛇口から
伸び伸びとした水を
小さな容器の世界に移した
蛇口から少し歩くと
水が人里に最初に現れる所が
あった
透明な色が
こんなに綺麗だなんて
初めて知った
透明な色は
遠近感さえ
わからなくさせる
急に目の前が真っ白になった
時間さえ
わからなくなった
少し経つと
意識がはっきりして来た
洞窟の中に居るようだ
不思議と安らかだった
ようやく
ここは
母の胎内だとわかった
私は羊水の上で
静かに眠っていた
いつまでも続く安心の中で
からだ全体を
こころの奥の奥を
透明な
あなたに任せていた

(#国民文化祭 #紀ノ国わかやま文化祭
#いわで現代詩の祭典 テーマ #色 応募詩)
2021年12月29日
詩「猫の話」木村永遠
母は相変わらず猫が嫌いだ
猫は臭い臭い
高校卒業まで暮らしていた家の
向かいのオバちゃんは優しかった
小学校の冬休み
オバちゃんの家に遊びに行った
入ったコタツは臭かった
ニャーニャーニャー
猫が3匹いた気持ち悪かった
その後も
「ドラ焼きがあるから遊びにおいで」
声を掛けられたが
2度とオバちゃんの家には行かなかった
高校を卒業した後
九州の東の市に引っ越した
この市で結婚をした
動物の話さえ一切した事の無かった妻が
猫好きな事を結婚してから知った
(もしも知っていたら)
白と黒の小さな野良猫を妻が家に入れた
この雄猫を『おにぎり』と名付けた
不思議と臭く無かった
僕たちは子どもの代わりだと思って
自然と家で飼う様になった
母が家を訪れる時はピンポンだけで隠れる
『おにぎり』だったが
妻や僕には甘えて
足にスリスリして御飯をせがんだ
『おにぎり』が家族になって
3年後
居間のサッシュの隙間から入って
ちょこんと僕の膝に乗ったのは
茶色の小さな雌猫だった
お家時間にパソコンを打つ僕を
まん丸な瞳で見つめていた
野良猫なのに
この猫も不思議と臭く無かった
人見知りで猫見知りの『おにぎり』が
この猫を家に入れる事には抵抗し無かった
家族が1人増えた
『おいなり』と名付けた
猫嫌いだった僕が
猫に癒されて猫好きになったのは
妻のおかげ『おにぎり』のおかげ
『おいなり』のおかげ
4人でいつまでも仲良く暮らしていたかった
『おいなり』は3歳になる前に
心臓の病で小さいまま亡くなった
3人家族に戻ってしまった
僕は膝が冷たくて仕方無い
猫は臭い臭い
高校卒業まで暮らしていた家の
向かいのオバちゃんは優しかった
小学校の冬休み
オバちゃんの家に遊びに行った
入ったコタツは臭かった
ニャーニャーニャー
猫が3匹いた気持ち悪かった
その後も
「ドラ焼きがあるから遊びにおいで」
声を掛けられたが
2度とオバちゃんの家には行かなかった
高校を卒業した後
九州の東の市に引っ越した
この市で結婚をした
動物の話さえ一切した事の無かった妻が
猫好きな事を結婚してから知った
(もしも知っていたら)
白と黒の小さな野良猫を妻が家に入れた
この雄猫を『おにぎり』と名付けた
不思議と臭く無かった
僕たちは子どもの代わりだと思って
自然と家で飼う様になった
母が家を訪れる時はピンポンだけで隠れる
『おにぎり』だったが
妻や僕には甘えて
足にスリスリして御飯をせがんだ
『おにぎり』が家族になって
3年後
居間のサッシュの隙間から入って
ちょこんと僕の膝に乗ったのは
茶色の小さな雌猫だった
お家時間にパソコンを打つ僕を
まん丸な瞳で見つめていた
野良猫なのに
この猫も不思議と臭く無かった
人見知りで猫見知りの『おにぎり』が
この猫を家に入れる事には抵抗し無かった
家族が1人増えた
『おいなり』と名付けた
猫嫌いだった僕が
猫に癒されて猫好きになったのは
妻のおかげ『おにぎり』のおかげ
『おいなり』のおかげ
4人でいつまでも仲良く暮らしていたかった
『おいなり』は3歳になる前に
心臓の病で小さいまま亡くなった
3人家族に戻ってしまった
僕は膝が冷たくて仕方無い

(#資生堂 #花椿 #今月の詩 応募詩)